2018/05/30

目標達成思考から目的思考へ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

前回では、普段の生活の中でコーチングの力、コーチとしての「器」を広げる具体的な二つの練習方法を私の経験を交えながらお伝えしました。「練習1 自慢話/武勇伝を聴く」「練習2 毎フィードバックをもらう」試していただけましたでしょうか。コーチングは人とのかかわりですので、文章を読んだだけでは何ら変化はおきません。いつもお伝えしていることですが、ぜひ実行して経験を積んでいただきたいです。

ネクストキャリアを考える

さて、これまでは「部下を育成する」という観点でお伝えしてきましたので、比較的若いスタッフに上司としてこのコーアクティブ・コーチングをどのように活用していくか、に絞っておりましたが、今号では、「ネクストキャリア」を考えていく上でコーアクティブ・コーチングがどのように機能するのか、ということについて書いていきたいと思います。以前にも少し触れましたが、この業界の離職率の高さはほか業界と比較して群を抜いていることは皆さんもよくご存じのここと思います。

いかに離職率を下がるかということに取り組んでいらっしゃる人事の方も多いのではないでしょうか。実際、私が以前勤務していたホテルでは、当時正社員630 名中、毎月の平均退職者数は10名。年間120名が退職していく計算で、毎年全体の約20%が常に入れ替わる状態でした。その120名減を新卒採用と中途採用で埋めていくのです。ましてや、近隣に新しいホテルがオープンするとなると、2 ~ 3カ月の間に50名を超える退職者が出てくる訳ですから、品質の担保と組織運営においては、その都度それは大変なエネルギーが必要でした。

ほかの業界では考えられない事態です。外資系と国内資本系てで差はあるものの、当時と大きく違うところは、現業部門の人員が多くを占めるため、以前なら結婚出産をきっかけに退職することが多かった女性が、いったん休職して復職する方や、女性が活躍する職種が増えたことと、定年延長も相まって特に老舗とよばれるホテルでは平均年齢の上昇等があげられます。そういう意味では、この業界では短期的、長期的、勤続派、転職派、等々「セカンドキャリア」にとどまらず「ネクストキャリア」を常に描く機会に恵まれている業界であることは間違いありません。

業界の発展に向けて

「ネクストキャリア」を常に描く機会に恵まれている業界、と表現しましたが、他業界では、定年まで勤め上げることが当たり前であり、これまでの歴史を作っています。それに比べてホテル業界は「勤め上げる」という観念は薄く、いかに個人が今の環境を味方にしてプロフェッショナルとして次へ進むのか、という「キャリアの一つに過ぎない」、という考え方が大きな土台となっているため、この「キャリア形成」についてはとても異色な業界であると言えます。

その特徴を最大限に生かし、業界がさらに発展していくことを考えると、私が、今このホテル業界に必要だと思うことは、ただ単に転職してポジションを一つ上げて権限を持ち収入を増やしていく、という直線的な「キャリアを積み上げる」という質感からの脱却です。

もちろん、直線的なキャリアを積み上げることを繰り返しながら、見つけられるものもありますし、最初に「総支配人になる」ということを目標にしてキャリアを積んでいくことは相当な覚悟を感じる姿勢です。そのためのあらゆる努力と、挫折や成功の経験を積み重ねながら進んでいくわけですから一筋縄ではいかない道であることは言うまでもありません。そこには大きな敬意を表すとともに、目標を持てなくなった定年間近の方や目標だけで突き進んできたパターンから脱却し、大きな目的を持ち、もっと自由な選択をしながら、「キャリアを創っていく~キャリアクリエイト」という質感に変えていくことだと思っています。

~思考の教育~「目標達成思考」から「目的思考」へ

目標はあくまでも目標であり、なぜその目標を目指すのかの「目的」が明確でないと、道を見失ったり、何か環境が変わる度に意欲を失ったりします。「目標達成思考」から「目的思考」に、といった「思考の変化(本質的な変化)」を促すかかわりとしてコーアクティブ・コーチング が役立つと思っています。

コーアクティブ・コーチング は「考える筋肉を鍛えてくれる」と表現したことがありましたが、まさにこのアプローチを活用してよく出てくる「思考パターン」を自覚し、自由自在にさまざまなバリエーションで思考することができたとしたら、キャリアについても、目の前の仕事においても随分と幅が広がると思います。

  • この仕事を選択すること/続けることで何を得ようとしているのか
  • このポジションを担うことで、何を実現したいのか/成し遂げたいのか
  • 今選択しようとしている次のステップの先にどんな景色を見たいと思っているのか
  • そもそも、このポジションを担っていることにどのような価値を見出しているのか
  • 次のキャリアはどこに向かう一歩としたいのか
  • なぜ今ここに所属しているのか/何を成し遂げたくてこのポジションを引き受けたのか

このような問いは、「目標」ではなく、その人の「目的」にアクセスするアプローチです。いかがでしょうか。

読者の皆さんも、今のご自身にこの問いを投げかけてみてください。どのような答えが自分の中からでてくるでしょうか。

もし、その答えが「目標」の質感だとしたら、更にその先に見たいものは何なのか「目的」に向けて思考してみてください。

そして、こういった問いかけを何度も繰り返すことで、「目的思考」が癖になり、問題解決においても、そもそもの「目的」という大きな目指す方向を見失うことなく、またモチベーションを維持しながら進むことが可能になります。定年間近の方や、ポジション獲得にのみ燃えているスタッフにも、ここに自分が存在する意味、次のステージにいく意味を問い、またかかわる側も、こうしてかかわる意味、目的は何なのかを明確にした上で面談時や、何か事あるごとにかかわってみてください。

今回の柴原の記事は週刊ホテルレストランで連載されています。

 

うまくリーダーシップがとれないと思っている方へ7つのツールをご紹介します

コメントを残す

*