今回は私がコーチングの魅力に引き込まれたエピソードをお話ししたいと思います。
私がコーアクティブコーチングの基礎コースに参加したきっかけは、「何を教えたら人は自律的な行動をするようになるのか」という問いでした。
前職のホテル勤務時代、一緒に働く若いスタッフに自分で考えて行動をするようになってほしいと思っていながら、ついつい「これはこうやって」、「それはこうやって」と指示をしてしまい自分の想いと行動が一致しないことが起きていました。
ホテルではお客様からのリクエストや相談には、その場で期待以上の答えを迅速かつ的確にお伝えすることが求められます。
実際に基礎コースに参加してすぐに気づいたことがありました。それは「教えない」ということ。それまで私は「何を教えたら…」という教えることが前提になっていましたが、そもそも教えない。言い換えると「質問をする」ということが自分で考えることに繋がるということ。
このように書いてみると当たり前のことのように思えますが、当時の私には「目から鱗」で基礎コースを終えて早速実践してみました。
一緒に働くなかで質問を投げかけるようにしましたが、最初は私の口から答えがこぼれ落ちそうになりながら(こぼれ落ちたことも何度もありました(笑))、必死に我慢して質問を投げていました。
そんなあるとき、若いスタッフがお客さまからクレームを受けてしまいました。すぐにその対応をして何とかお客様の気持ちが治まったあと、そのスタッフと仕事をしながら話をしました。
これまでクレームがあったとき、私は結構厳しく注意をしてきました。ただ今回だけは注意をするのではなく、どうしてそのような対応をしたのか、本当はどうしたかったのかを聞くことに徹しようと決めて関わりました。
普段は指示命令を投げられるのに、その時は問いを投げられるのでスタッフも戸惑いがあったと思います。「そんなこと聞かれても…」、「本当は怒ってるんでしょ」とういような表情をしていました。
私もクレームを起こしたことへの怒りや対処の仕方のアドバイスが本当に喉から何度も出そうになりました。でも今回だけは絶対に指示命令をしないと決めていたのでぐっと我慢しました。
仕事を進めながら我慢すること5時間程(!?)、ようやく「本当はこうしたかったんです」とそのスタッフの口から出てきました。私は続けて「どんな想いからそうしようと思ったの?」と聞くと、「お客さんに喜んでもらいたいから」と。
そのときスタッフは自身の気持ちに気づいて驚き、すっきりとした表情をし始めました。その表情はこれまで見たことのない生き生きとした表情でした。
その表情を見てとても嬉しい気持ちになったと同時に「これまでこの表情を抑えさせていたのは私自身の関わりにあったんだ」と気づき猛省しました。
私自身もそのように育てられたので、その方法しか知らなかった訳で仕方がなかったと言えばその通りですが、気づかずに人を抑えこんでしまっていたことに気づいたことは、私の人生のターニングポイントとなり「自分で考えて行動してほしい」という私自身の想いと行動がようやく一致した瞬間でした。
誰にでも想いや願いがありますが、それと言動が一致していないことが起こることがあります。コーチングは人の成長につながる関わりですが、同時に自分の想いと行動が一致することにもなるものでもあります。