2018/08/07

レベル2,3の傾聴

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前回では、初心に戻り、コーチングの基本中の基本だといわれる「傾聴」について書かせていただきました。コーアクティブ・コーチングで伝えている「傾聴」のポイントは、「傾聴」はスキルではなく、どのような姿勢、心持ち、どこに意識を向けて「聴く」のかという、自分自身の「在り様の一つ= Being」である、としています。また、傾聴にはレベルがあり、前号では「レベル1(内的傾聴)」についてお話ししましたが、今号ではレベル2 (集中的傾聴)とレベル3(全方位的傾聴)がどのような質感なのかを分かりやすく書いてみたいと思います。

レベル2の傾聴

少し前回のおさらいをしながら進めていきましょう。

レベル1 内的傾聴Internal Listening /レベル2 集中的傾聴Focused Listening /レベル3 全方位的傾聴Global Listening

レベル1(内的傾聴)とは、簡単に説明すると、相手の話を聴いているようでも自分の心の声に意識が向き、相手の話に意識が向いていない状態です。

これは、コーチングでは「相談者側の姿勢」であり、コーチが長い間とどまる姿勢ではありません。相談者としては、コーチからの問いに対して自分はどのように考えているのか、答えを自分自身の中にとりにいくためのとても大切な状態です。

では、レベル2(集中的傾聴)とはどのような姿勢なのでしょう。日本語には「顔色をうかがう」という言葉がありますが、これは一種のレベル2 的な行動だと言えます。誤解のないよう念のためにお伝えしておきますが、単純に「人がどのような状態か、どのような意向かなどについて調べる姿勢」という意味で述べており、一般的な使われ方である、それによって相手の意向を気にして左右されたり、相手に気に入られるために媚びへつらう行動をとったり、自分の価値が低いものとみなして自己卑下したり遠慮したり、という意味合いは全く含んでおりません。

そういう意味で、コーチの姿勢として大事なのは、顔色をうかがうけれども、そこから読み取ったもの、感じたことを評価・判断せず、また左右されずに、そこからさらに、顔色をうかがっていくことをずっとやり続ける姿勢です。実は、この「やり続ける」というのがとても難しいのです。

さて、相手に集中している姿勢ですが、具体的にどこに焦点をあてていくのでしょう。皆さんも普段の会話を思い出してみてください。話している相手に集中しているとき、何に焦点をあてていますか?

「話しの中身/話し方/表情/身振り手振り/感情/テンション」

恐らく、まずは、「話の中身」に焦点をあてていることでしょう。多くの会話の場合、特に感情が伴う会話等の場合、最初はレベル2で集中していたにもかかわらず、途中で中身に対する評価や、相談事であれば過去の自分の経験と照らし合わせる思考が起こってきて、どんどんレベル1に陥っていきます。このあたりから、話し手は何かを感じ始めます。「自分に意識を向けてくれているのか?」と聞き手の「顔色をうかがう」ようになるのです。ホスピタリティー産業に携わる者としては非言語からもメッセージを受け取るセンスは持ち合わせているのでなおさらですね。

これが、話し手側の意識がレベル1からレベル2へ聞き手の意識がレベル2からレベル1へ向いてしまう逆の構図になる瞬間です。自分の話がどのように評価されているのか、理解されているのかを知るために、話し手側だった人が聞き手側に意識を向けるようになり、聞き手は自分の話したいことを話し出します。

その後は、ご想像どおり、上司部下の関係でよくある一方的にアドバイスして終了というパターンも少なくないでしょう。ポイントは、自分がレベル1でいると相手はレベル2になる。自分がレベル2でいると、相手はレベル1になる。今、自分はどこに意識を向けているのかを自覚することにある。ということです。

レベル3の傾聴

レベル2(集中的傾聴)は「顔意をうかがう」と表現してみましたが、レベル3(全方位的傾聴)は一種の「空気を読む」というのに似ています。ただし、こちらも誤解のないようにお伝えしておくと、「何の解釈も、評価も、分析もなく、どのような空気感なのかに意識を向ける」姿勢であり、一般的に使われる「その場の雰囲気から状況を推察したり、その場で自分が何をすべきか、すべきでないか、相手のして欲しいこと、して欲しくないことを憶測したりして判断する」という意味合いは全く含んでおりません。面白いもので、日本語には目には見えない「場/ 雰囲気」を表す表現として「空気」を形容する言葉がたくさんあります。

張りつめた空気/澄んだ空気/新鮮な空気/よどんだ空気/濁った空気/ 白けた空気/重苦しい空気/喜びに満ちた空気/熱気にあふれた空気/空気が動いている等々コーチングは米国から発生しましたが、本来このレベル3は日本人にとってはとても得意と言えるかもしれません。

ポジティブ/ネガティブ

会話で言うと、一般的には、「ポジティブ/ ネガティブ」という区別をし、どちらかというとポジティブに進めていこうとしてしまいがち(評価、判断、分析、解釈が起こるため)ですが、コーアクティブ・コーチングではレベル2であれ、レベル3であれ、相手に意識を向けて受け取ったもの(聴こえたもの) に対してそういう区別は一切しません。

「傾聴」という意識においては、感情やエネルギー、パッションが今この瞬間どのような状態にあったとしてもコーチはクライアント(話し手)の「鏡」のように存在し続け、その存在があるからこそクライアントは常にレベル1で自分自身と向き合うことが可能になるのです。

意識を相手に向け続けることは相当難しいことだとは思いますが、面談や相談を受けたときにぜひ試してみていただきたいと思います。いかがでしょう。「傾聴」が「スキル」ではなく、聴き手側の「姿勢/在り様」である、ということが伝わりましたでしょうか。

「傾聴」の奥深さ

最後に、レベル2 ~ 3 は、はっきり切り分けられるものではない、ということもお伝えしておきます。また、どこに焦点をあてていくのかについては、上述したものにとどまらず、本質的な変化に向けた「傾聴」という観点からまだまだ奥深さがありますので、具体的な使い方と共に次号でお伝えしたいと思います。

今回の柴原の記事は週刊ホテルレストランで連載されています。

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