2019/02/27

集中するコツ

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浄化のスキル

今回も前回に引き続き、「コーアクティブ・コーチングから学ぶ些細な一言」、と題して書いていきたいと思います。日常の会話に少し取り入れるだけで、相手の状態が大きく変わるちょっとした一言をお伝えしていきます。

今回は「浄化のスキル」です。「浄化」とは、心理学、カウンセリング、ヒーリング、セラピーといった領域で使われる言葉で、心のしこりを外部に表出させることで症状を消失させるための一つの治療法だそうです。コーアクティブ・コーチング  の「浄化のスキル」の目的は、テーマに対して心から集中できる状態にすることです。

何かに対する怒り、悲しみ、喜び等が心を占領し、コーチングが始められない時や話しの途中でそのような状態になった時に、「心を占領しているもの、溜まっているもの(押し殺していた感情等)を吐き出し、もとの状態にする(心の余白をつくる)関わり」です。ここでは日常でもこの関わりが本来の状態を取り戻すために大きな役目を果たしてくれるということをお伝えしたいと思います。

「吐き出してみたら?」

まず現場で耳にする上司部下の会話を事例にしてみましょう。

(例 1)B 氏「先日頼んだ S 社にプレゼンする新しいプラン、そろそろできたか?」A 氏「申し訳ありません。最近いろいろなことが重なって仕事にも集中できなくて…」B 氏「いろいろ重なって忙しいのは A さんだけじゃないんだよ。皆、いろんなこと抱えながら生きてるんだ。そんなこと言ってる場合じゃないんだよ。期日は迫ってきてるんだ。とりあえず明日が期日だから!」

B 氏の目的は S 社に提案する新プラン案の出来栄えを知ること、また、いつ完成するのかを確認することにあります。もちろん、仕事の進捗を確認することは重要で、万が一のことを考えて事前に対応を考えておくこともマネジメントとしては必須です。

ただ、皆さんも経験があるかと思いますが、こういう場合大抵クオリティーの高いものはあがってきません。提出されたとしても、B 氏が期待したものではなくその場で感情的にもなることでしょう。頑張って作成した提案書は差し戻しされ、A 氏はさらなるプレッシャーを感じ、メンタル的にとても弱い状態になることは容易に想像できます。では、「浄化のスキル」を試した例を読んでみましょう。

(例 2)B 氏「先日頼んだ S 社にプレゼンする新しいプラン、そろそろできたか?」A 氏「申し訳ありません。最近いろいろなことが重なって仕事にも集中できなくて…」B 氏「そうか。集中できていないのか。そんな状態でいい仕事なんてできないだろうから、私でよければちょっと吐き出してみないか?」

いかがでしょうか。「面倒くさい」「集中できないのは A 氏の自己管理の問題で、上司が解決すべきことではない」「そんな悠長に構えている時間は私にはない」「甘やかすだけだ」等々の声が聞こえてきそうですね。確かにそういう切羽詰まった状況の場合もあるでしょう。

ただ、大きな目的は「質の高い新しいプランを早くお客さまに提示すること」であり、そのためには担当の A 氏が本来の力を出せる状態にすることが最優先事項です。ここからは私のこれまでの経験ですが、「全部吐き出してみませんか?」と提案して相手が話し出して、話が止まらなくなったことは一度もありません。自分自身もそうですが、だいたい 5 分~ 20 分程度話すと自分の心の中にスペースが生まれ、冷静さを取り戻していきます。人はずっと一方的に話し続けることはできないのです。ただ、吐き出すことを促した側、つまり聴き手(コーチ)の聴き方にはコツが必要です。

聴き手は、話の内容について解決しようとか、コメントしようとかを考えるのではなく、「そうですか」「そうだったのですね」と相づちをうちながらただただ聞くだけの存在でいることです。

目の前の人が「全部吐き出してみませんか」の提案に同意したならば、その人が「『すべて』を吐き出す」こと、「『すべて』を『吐き出せる場』」を作ることに集中することです。たとえ話のつじつまが合っ てなくても、論理的でなくても、目的はいろいろなものの絡まりによって生まれたモヤモヤやしこりを「すべて吐き出す」ことですから、指摘する必要は一切ありません。人はついつい目の前の人が困っていると、助けたいという思いに駆られ、いろいろと一緒に考えたり、慰めたり、励ましたり、元気のでる方向へと会話を進めがちです。

皆さんもそのかかわりはよくしているのではないでしょうか。そこをぐっとこらえて目の前の人が「浄化」した状態になるようかかわること、それが「浄化のスキル」を使うということです。また、物理的に「吐き出す場所」も大切です。普段のデスクではなくリラックスして話せる場所や、どんな状態になっても「吐き出し続けられる」よう、人目につかない場所を確保するといいでしょう。

いつまで聴いていればいいのか

目的は「すべてを吐き出すこと」ですから、ひとしきり話してあふれ方の勢いが緩まったと感じたら「全部吐き出せた?」「まだ吐き出したいことがあれば全部出してしまったらどうだろう?」「話してみて、今、心の状態はどうだ?」と聞き、どれだけ吐き出せたか心の状態を確認します。

すべてを吐き出したとしても、状況や問題が解決するわけではありません。しかし、話すことで自分の中で「解消」できることがあるのです。テレビドラマの夫婦の会話で奥様がご主人に対して「ただ聴いてほしかっただけなのよ!」と怒りをぶつけるシーンがよくあります。これと同じで、何か解決してほしい訳でもアドバイスが欲しい訳でもなく、今、こんな気持ちでいるのだ、ということをただ聴いてもらいたいだけなのです。それだけでスッキリ(浄化)し、気分を変えて新しい行動に向かえるエネルギーや心に余裕が出てくるのです。

本来の状態に戻ったところで本題に触れていきます。改めて今どのように考えているのか、現実的に間に合うのか、等を確認し、アドバイスやコメントがあればこのタイミングです。ここまでで 1 時間くらいでしょう。そして最後に一番大事なのは、「何か私にできることはありますか?」という一言です。

パワースポット巡りやパワーストーンがはやっている昨今。パワーを取り込みたいと願う人があふれています。外からのパワーを取り込みながらも、人と人との「つながり」の中に存在する「パワースポット」にも意識を向け、内側にある本来のパワーをよみがえらせてほしいと願っています。

今回の柴原の記事は週刊ホテルレストランで連載されています。

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