いきなりですが、質問です。
- あなたのチームは、成果を上げるためにどの程度効果的な関係性を築いていると思いますか?理想的なチーム像を10として、現状の点数をお答えください。
- あなたの考える、理想的なチーム像を教えてください。
私はシステム・コーチとしてチームに関わる際に、この簡易サーベイを全員に対して匿名で実施します。非常に主観的なデータですが、興味深いのは、リーダーだけ7点を付けて、メンバーが3-5点を付けるようなケース、あるいはリーダー含め多数派が6点くらいを付け、1-2名が極端に低い(0とか1とか)ケースがよくあることです。
次に興味深いのは、理想的なチーム像について求めるものには、ほとんどのチームで共通する要素が見られることです。
・オープンなコミュニケーションができる
・立場や意見の違いを超えて、協力し合える
・互いに尊重し、それぞれの強みを活かせる
・一体感がある
・前向きで活気がある
これらの要素をまとめるならば、理想のチームとは決して「仲良しクラブ」を望んではいないと言えるでしょう。時には本音でぶつかり合いながら、共通の目的・ゴールに向かって、一体感をもって前に進んでいく。成果を上げるためには、そんなチームが必要だ、という現場の声が聞こえてくるように思います。
前回、チームが成果を上げるためには、第一に、チームの関係性の質を高めることが重要であることをご紹介しました。https://manejimento.jp/team-building/1049
組織行動学では、「全員が等しく声を出し」「対立を乗り越えることができ」「肯定性が高く」「まとまりがある」チームが高いパフォーマンスを上げることができると言われているので、正に上記のような「時には本音でぶつかり合いながら、共通の目的・ゴールに向かって、一体感をもって前に進んでいく」という現場の実感はアカデミアでの研究とも一致していると言えるでしょう。
しかし、こんなチームにしよう!と言って、簡単に実現できるものではありません。本音を言いにくい職場で「本音を出そう!」と単に呼びかけて、うまくいくでしょうか?訊くまでもなく、それでうまくいったら苦労はないよ、という現場のリーダーの方々の声が聞こえてきそうです。では、どうしたらいいのでしょうか?
その鍵は前々回のブログでお伝えした「心理的安全性」の醸成にあります。https://manejimento.jp/team-building/816
そのために今回お勧めしたい一つの手は、上述の簡易サーベイを「匿名」で実施してみて、結果をチーム全員に見せ、何を感じるか、今後どうしていきたいか、話し合ってみることです。
ここでのポイントは、2つ。
・リーダーは、自分と違う意見が出ても、否定せずにまずは受け止める
・「全員から」本音っぽい声が出ることを目指す
前向きな数人と後ろ向きの数人がチームにいたとして、前向きな数人の声だけを取り入れて、チームの方針を決めてしまったら、何が起こるでしょうか?チームの一体感からはますます遠ざかり、チームの成果にも影響するでしょう。そして、折角勇気をもって自分の声を出しても、リーダーから否定されたら何が起きるでしょう?その人だけでなく、他のメンバーも、声を出すことが怖くなってしまうでしょう。
また、全員から声が出ないことも、もちろんあるでしょう。その時、「こら、みんな声を出せ!」ではなく、「そうか、今のチームは、全員から声が出しにくい状態なんだな」という事実を自覚して、待つことも必要です。
これはリーダーの方にとっては怖いプロセスになるかもしれません。しかし、まずはリーダーが先頭を切ってこのプロセスを潜り抜けて、全員が「本音を出しても大丈夫なんだな」と安心できる場になったとき、チームは変わり始めます。その時には今リーダーであるあなたが背負っているものをメンバーが一緒に背負ってくれるチームになるのです。
あるチームでは「本音でコミュニケーションできるチームにしたい」という願いを全員で共有しながら、なかなか実現できずにいました。そこでシステム・コーチは、チームの肯定感を高める関わりをし、それぞれの全員の声が出しやすくなるようなワークを行いました。その中でリーダーが
「実は俺、しんどいんだ」
と語り始め、どんなしんどさがあるのかを語ってくれました。その時、チームの空気が変わったのをシステム・コーチもメンバー全員も感じたと思います。そのあとはポツリポツリと全員が声を出し始め、その日のコーチング・セッションが終わった後、全員で飲みに行きました。翌日のセッションではチームの一体感は、見違えるようでした。
我々システム・コーチの仕事は、チームが本当になりたい姿に変化・成長することを支援することですが、そのためには「全員が、本当の声を出しやすくする安心安全な場づくり」が、その役割の大半だといっても過言ではありません。そして、その先陣を切るリーダーも我々は支えていきます。リーダーであるあなたにとっても「安心安全な場」を創るのも私たちの仕事だからです。一時的には苦しい時間を通るかもしれませんが、決してリーダーであるあなたを一人にはしません。
「速く行くなら一人で行け 遠くに行くならみんなで行け」
というアフリカのことわざがあるそうですが「みんなで速く遠くに行く」チームになれるためのチーム作りに役立つ考え方、事例を、次回以降も引き続きお伝えしたいと思います。